はじめに
就労支援で働く上で、実務経験と資格は強みになります。
近年は、「障害者就労支援士」が厚労省によって新設されるなど、福祉分野に活かせる国家資格が注目されるようになりました。
今後ますます需要が増えると予想される福祉の世界について、キャリアプランを見据えた資格についてお伝えします。
資格取得で広がるキャリアの可能性とその理由
障害福祉の分野でキャリアを積んでいきたい時、実務経験は何よりの強みになるでしょう。
しかし、資格を取得して体系的に知識を身につけることも、実務経験と同じくらい重要です。
就労支援の現場では、さまざまな特性をもつ利用者に合わせて、個別の支援を継続的に行うことが求められます。
そのため、障害について専門的な知識を身につけるとともに、福祉制度についても正しく理解をしておく必要があります。
企業での障害者雇用が進む中、就労支援は求められる仕事
法改正によって、企業における障害者雇用は少しずつ進んでいます。
その中で、多様な特性をもつ利用者の適性を見極め、継続的な就労を可能にする就労支援の必要性も高まっています。
就労支援や福祉の資格も、その世相に伴って注目度とニーズが高まっています。
いい換えると、閉じられた世界と思われがちだった福祉の現場は、少しずつではあるものの確実にひらかれているといえます。
就労支援で活用できる資格一覧
就労支援の現場で知識が役立つ資格には、次のようなものがあります。
動作サポートを行う「理学療法士」/「作業療法士」/「言語聴覚士」
「理学療法士」と「作業療法士」、「言語聴覚士」という資格は、いずれも非常に専門性の高い資格であり、就労支援の現場でも重宝されています。
「理学療法士」は、基本的な動作能力を回復させるためのリハビリテーション専門職です。国家資格であり、3年制あるいは4年制の養成学校を卒業することで受験資格が得られます。
合格率は例年70〜80%前後となっています。
「作業療法士」は、日常生活の活動や職業に関連した活動の改善を通じて、心身の機能回復を支援する専門職です。
特に深く関わるのは、発達障害児の療育や精神障害者の方の社会復帰支援です。
養成学校で3〜4年学ぶことで受験資格が得られる専門的な国家資格です。
「言語聴覚士」は、コミュニケーションだけでなく、摂食(食事をとること)や嚥下の障害評価やトレーニングも行う専門職です。発達障害の分野で需要の高い資格ですが、知的障害の方への支援にも深く関わっています。
こちらも、「作業療法士」と同様に3〜4年は養成学校で専門的に学ぶ必要があります。
福祉分野の国家資格「社会福祉士」
「社会福祉士」は、身体的あるいは精神的、社会的な課題を抱える人へ相談支援を行うための国家資格です。
・福祉系大学で指定科目を履修する
・福祉系短大卒業後に一定の実務経験を積む
・一般養成施設で学習する/実務経験を積む
いずれかの方法で学び経験を積むことで、受検資格を得られます。
以前は「社会福祉士」の合格率は低く、25〜30%台という時代もありました。
しかし現在では回復しており、近年の合格率は50%台となっています。
難易度の高い試験のため専門性は高く、就労支援の現場で非常に有用とされる資格です。
精神障害者対応に関わる国家資格「精神保健福祉士」
「精神保健福祉士」は、精神障害のある利用者が社会復帰するために、相談援助を行う国家資格です。
・福祉系大学で指定科目を履修する
・福祉系短大卒業後に一定の実務経験を積む
・一般養成施設で学習する/実務経験を積む
いずれかの方法で受検資格を得ることができます。
試験の合格率は、例年60〜70%台を推移しています。
この資格は、相談支援専門員の任用要件を満たす上で有利にはたらくため、キャリア形成にとって重要な資格になります。
福祉・教育の分野における国家資格「公認心理師」
「公認心理師」は、福祉だけでなく保険医療、教育の分野でも活用できる国家資格です。大学院や相当の施設で必要な科目を履修することで、受検資格が得られます。
場合によっては、実務経験が併せて必要になることもあります。
「公認心理師」は、支援を必要とする利用者の方の心理状態の観察、分析、相談支援だけでなく、家族支援や必要な情報提供を行います。
合格率は60〜70%を推移していますが、年によっては40%台になることもあります。
就労支援の現場では、カウンセリングや対人関係の悩みに対応するだけでなく、利用者の適職を探したり、職場定着のための調整やケアをしたりと、重要なポジションを担っています。
厚労省が新設する「障害者就労支援士」
「障害者就労支援士」は、厚生労働省が2027年度後半から2028年度にかけて新設するとしている民間資格です。
当面は民間資格ですが、資格の運用が安定してきた時点で国家資格へ移行させることも検討されています。
「障害者就労支援士」は「障害者雇用と福祉の橋渡しを行い、就労・職場定着を支援する人材のための資格」で、ジョブコーチ支援に深く関わる資格です。
・障害者就労支援の実務経験が3年以上ある
・ジョブコーチ養成研修を修了しており、障害者就労支援に従事している
このいずれかの条件に当てはまる人が受験できます。
これから福祉の世界で働こうとしている人にとっては、ちょうど実務経験を積んだタイミングで受検できる資格であり、キャリアプランを検討する上で重要な資格といえるでしょう。
3つの研修カリキュラムがある「相談支援従事者研修」
「相談支援従事者研修」には「初任者研修」、「現任研修」、「主任研修」という3つの研修があります。
いずれも、都道府県指定の研修機関から与えられる公的資格になります。
「初任者研修」は受講資格として障害者の保健医療や福祉、就労、教育分野での一定以上の経験が必要です。講義と演習が42.5時間があり、これらと別に実習を受けることで資格取得となります。
「現任研修」は、相談支援専門員として働き続けるために必須の研修です。
講義と演習合わせて24時間分のカリキュラムを、5年に1度受けなければなりません。
「主任研修」は人材育成や他の職員への指導について、必要な知識を学ぶための研修です。
講義と演習で30時間分のカリキュラムがあります。
キャリアUP!通称サビ管「サービス管理責任者等研修」
「サービス管理責任者等研修」には「基礎研修」、「実践研修」、「更新研修」の3つがあります。
いずれも都道府県が指定した研修機関があり、そこで講義と実習を受けます。
公的資格であり、サビ管と略されることもあります。
「基礎研修」は初歩的な研修です。福祉事務所で利用者の個別支援計画を作成する管理者として働くための、最初の一歩といえます。
この研修を終えると、個別支援計画の原案を作成できるようになります。
「実践研修」は基礎研修修了後に、2年間のOJTを受けた人が受講できる中級編の研修です。ちなみにOJTとは、日常業務という実践を通じて、上司や先輩から必要な知識や技術を学ぶことで、「On the Job Training」の頭文字をとったものです。
実践研修を受けると、正式にサービス管理責任者として配置されることになります。
「更新研修」は、サービス管理責任者として働き続けるために必要な研修です。
5年に1回は必ず受講する必要があります。
働きながら資格を取得するための勉強方法
資格には、大学や大学院のような専門的な機関で学ぶ必要があるものと、実務経験が必須なものがあります。
大学や大学院で学ぶというと、社会人には難しいという印象を受けるかもしれません。
ですが、現在は社会に出た後も必要な時に再び教育機関で学び、キャリアを形成していく「リカレント教育」が注目されています。リカレント(recurrent)には、循環する、あるいは繰り返すという意味があり、時代に即した学びを得るために提唱されました。
また、教育訓練給付金などの便利な制度を利用することで、経済的な負担を減らすこともできます。
教育訓練給付金とは
「教育訓練給付金」とは、指定講座を受講する際に必要の一部が支給される制度です。
福祉の資格では、社会福祉士、精神保健福祉士の養成課程など、さまざまな資格が対象になっています。
働きながら資格取得を目指す人のための制度ですが、離職の翌日から起算して1年以内に受講を開始するなど、いくつかの条件を満たすことで受給が可能です。
通信制大学や週末開講講座の活用
資格取得のためには、一日数時間の学習時間を確保する必要があります。
フルタイムで働いているとまとまった時間を確保するのは難しい場合があるので、昼休みや朝夕の通勤時間など、すきま時間を活用すると良いでしょう。
スマホやタブレットを利用することで、重たいテキストを持ち歩かなくても効率よく勉強ができます。
また、講座を受講する必要がある資格は、通信制大学や夜間に開講している専門学校、週末に行われる養成講座などを利用しましょう。
同僚や同じ目標を目指す人同士で勉強会を開くなど、切磋琢磨し合えて孤立しない工夫も必要です。
職場によっては、資格取得のための支援制度や研修休暇のシステムが備わっているところもあります。働きながら資格取得を目指す場合は、これらの制度をフル活用してなるべく負担の少ない方法を模索してみましょう。
就労支援で資格を活かすためのキャリア形成や今後の展望・まとめ
就労支援のニーズは年々高まっています。
利用者と企業をつなぐ橋渡し役としてだけではなく、多様な特性をもつ利用者が安心して働き続けるために、なくてはならない仕事といえるでしょう。
厚労省が新設する「障害者就労支援士」は、2025年度以降に新設される予定の検定ですが、いずれ国家資格に格上げされることが公表されています。
他にも、現在は民間資格とされているものも、公的資格や国家資格へと変わっていくかもしれません。
福祉の知識と実務経験、資格取得は、先の未来にあってもAIに負けないスキルとなるはずです。