はじめに.
障がい者雇用は、障害をもつ方が障がいを開示して働くための、専用の採用枠です。
採用企業は、就労にあたって合理的配慮が義務づけられており、一般雇用よりも働きやすい環境を得やすいのが特徴です。
今回は、障がい者雇用について、雇用者のメリットと安定的に働くための「失敗しない選択」についてまとめています。
1.障がい者雇用とは何か
障がい者雇用とは、障がいのある方を対象として、企業が採用枠を定めている制度です。
採用枠は、障がい者の安定雇用を目的とした法律「障害者雇用推進法」で定められた雇用率に基づいて決められています。
1-1. 障がい者雇用の定義
障がい者雇用に応募できる人は、身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障がいのいずれかがある方です。
原則として、上記いずれかの障がい者手帳を所持している方が対象になります。
障がい者雇用は、障がいを開示して働くことが前提になっているため、企業は合理的配慮などで働きやすい環境を整える必要があります。
1-2. 障がい者雇用の必要性と社会的背景
現在では、雇用率に基づく障がい者の雇用は企業の義務となっています。
雇用率を下回った企業は行政指導の対象となるなど、ペナルティを受けます。
障がい者雇用は、企業にとってのメリットもたくさんあります。
法定雇用率もしくはそれ以上の配置で障がい者を雇用することで、税制優遇や助成金を受けられることは、最大のメリットといえます。
また、合理的配慮によって今まで曖昧だった作業のマニュアル化が進んだり、適材適所の配置が可能になったりすることが期待されます。
いろいろな人を雇用することで、人材多様化が実現し、組織を活性化することもできます。
現実的な視点では、障がい者雇用を制度化することで、慢性的な人手不足を解消しようという側面もあります。
なお、近年では、CSR(企業の社会的責任)を重視することが、企業の成長と社会貢献につながるとされており、障がい者雇用の必要性は今後も高まり続けていくことが予想されています。
1-3. 障がい者雇用における法定雇用率
企業は、一定の割合で障がい者を雇用する義務がありますが、この割合を示すパーセンテージは「法定雇用率」といいます。
2024年に、障がい者雇用の法定雇用率は引き上げられました。
引き上げは段階的に行われるため、2026年7月以降のパーセンテージも計画されています。
なお、民間企業と行政機関などで雇用率には違いがあります。
現時点での雇用率は次のとおりです。
民間企業:2.5%(2026年7月〜2.7%予定)
国/地方自治体:2.8%(2026年7月〜3.0%予定)
教育委員会:2.7%(2026年7月〜2.9%予定)
常時40人以上の従業員を雇用する企業では、法定雇用率を遵守することが義務づけられています。
もし、100人以上の従業員が常時雇用されている企業が法定雇用率を下回った場合は、「障害者雇用納付金制度」に基づいた納付金の支払いが義務づけられます。
納付金は原則、不足している障がい者1人につき「5万円/月」です。
雇用においては、「不当差別の禁止」と「合理的配慮の提供義務」が生じます。
不当差別とは、障がいを理由に昇進を妨げることなどが該当します。
合理的配慮の具体例には、「視覚障がい者のために読み上げソフトを導入する」、「聴覚障がい者のために筆談のシステムを整える」などがあります。
1-4. 2026年現在の雇用状況
厚労省の「障害者雇用状況」集計結果によると、令和7年の雇用障がい者数は70万4,610人です。
前年比で約2万7,000人増加しており、過去最高を更新しました。
しかし、法定雇用率を達成している企業の割合は46.0%と半数に満たず、前年と変化もありません。
つまり、障がい者の雇用者数は数字で見ると増加していますが、法定雇用率を達成している企業は半数以下であり、さらなる雇用促進が必要であることが分かります。
法定雇用率の引き上げは、5年ごとを目安に行われます。数字には、世の中の経済状況や労働市場の状況が反映されますが、少子高齢化が加速度を増す中では、法定雇用率の遵守が企業の雇用確保に大きな役割を果たすかもしれません。
2. 障がい者雇用と一般雇用について
次に、障がい者雇用と一般雇用の違いについて、確認してみましょう。
障がい者が一般就労する場合は、企業に障がいを開示するかしないか(オープン/クローズ)を選べるのに対し、障がい者雇用は原則として障がいを開示(オープン)して応募する必要があります。
この前提をもとに、雇用形態の違い、待遇や職務内容の違いを確認しましょう。
2-1. 雇用形態や待遇、職務内容の違い
一般雇用は、健常者と同じ基準で採用、雇用されるため合理的配慮や、業務の軽減は受けられません。業種によっては、フルタイム勤務や転勤などを求められることもあります。
障がい者雇用は、企業が合理的配慮を行うことが義務とされているため、通院のために時短勤務を行ったり、可能な範囲で専門の設備を設置してもらったりすることも可能です。
特性を理解してもらった上での配置が行われるため、長く働きやすい傾向にあります。
雇用形態は契約社員やパート勤務など、有期雇用からスタートすることが多いのが特徴です。
2-2. 【本人】障がい者雇用のメリットとデメリット
障がい者が一般雇用枠で採用されると、健常者と同様のキャリア形成を目指せる上、給与水準も高く維持できるというメリットがあります。
一方で、合理的配慮がなされないため、体調を崩すおそれがあるというデメリットがあります。また、障がいを開示せずに就労した場合、特性や体調について周囲の理解を得にくいというリスクもあります。
障がい者雇用は、一般雇用よりもキャリアアップや昇給の幅が限定的なことがデメリットです。
一方で、特性や身体の状況を理解してもらえるため、安定して長く働きやすいというメリットがあります。一般就労が困難な方でも、障がい者雇用を検討することで、社会参加を機会を得て、経済的自立を目指すことができます。
また、働くことで肯定感や自信を身につけるなど、自己実現を達成できるのも、大きなメリットといえます。
2-3. 【企業】障がい者雇用のメリット
障がい者雇用は、障がいをもっている方にだけメリットがある優遇措置のように感じるかもしれません。しかし、実際は違います。
企業は障がい者雇用を促進することで、企業イメージの向上を図ることができます。
企業の社会的責任を示すCSRは、Corporate Social Responsibilityの頭文字をとったものです。
企業は利益を追求するだけでなく、環境保全や人権尊重といった社会全体にとってより良い取り組みを行なっていくべきだという考えや、取り組み自体を意味します。
積極的な障がい者雇用は、人権の尊重や地域貢献と関連しており、企業の信頼や堅実さを示すことができます。
ここ数年は、就活生がCSRに着目して応募する企業を選ぶ傾向もあり、無視できない要素になっています。
もう一つのメリットは、障がい者雇用に取り組むことで、多様性の促進と業務効率の改善が見込まれることです。
多様性の促進は、多角的な視点の獲得につながり、企業の存続や成長によい影響をもたらします。
また、合理的配慮を導入する過程で、マニュアルが整備されたり、健常者も障がい者も過ごしやすいユニバーサルな環境の実現が期待されます。
障がい者雇用は、巡り巡って社内の活性化にも一役かっています。
3. 障がい者雇用に関するよくある質問
障がい者雇用にまつわる「よくある質問」を、本人と企業の両サイド向けにまとめます。
障がい者雇用の応募について不安や知りたいことがあったら、ZERO(ゼロ)へ気軽にお問い合わせください。
3-1. 【本人】よくある質問
Q:障がい者雇用ではどんな職種がありますか。
A:障がい者雇用は、簡略化された業務を担う働き手を募集することが多く、職種は限定的です。自分がやりたいこととマッチしていない可能性もありますが、今後募集職種が拡大していく可能性もあります。
【募集の多い職種例】
・事務補助(データ入力)
・書類整理
・軽作業(清掃、工場内作業など)
・ライン作業(検品、梱包)
【募集の少ない職種例】
・対外業務(営業、広報)
・管理職、マネジメント業務
・専門職(エンジニア、デザイナー)
Q:一般雇用と障がい者雇用の給与差はどれくらいですか。
A:一般雇用の平均月収は約30万円とされていますが、障がい者雇用は障がいの種類によって違いはあるものの平均月収15万円に届かないのが現状です。
これは業務が補助的な内容になりやすいこと、非正規雇用の割合が多いことも関係しています。
厚労省によると、令和5年時点での平均月収は次のとおりです。
・身体障がい者:23万5,000円
・知的障がい者:13万7,000円
・精神障がい者:14万9,000円
・発達障がい者:12万7,000円
Q:就労途中で体調が変わるのが不安です。
A:合理的配慮やキャリアプランは、体調や身体の変化に合わせて見直すことができます。例えば、最初はかんたんな作業を担当していても、慣れてきたら昇進を見据えてプランを描くことも可能です。また、現状では続けられないと思った時には、必要な配慮や業務内容について再び話し合うこともできます。
H3. 3-2. 【企業】よくある質問
Q:障がい者雇用の助成金はいつ申請できますか。
A:障がい者雇用の補助金や助成金は、雇用開始直後から申請できるものが大半です。しかし、手続きには準備が必要なので、採用と同時にハローワークや労働局などで要件を確認して進めていくことをおすすめします。
Q:障がい者雇用で起きたトラブルはどこに相談すればいいですか。
A:障がいの種類や程度によって、想定されるトラブルはさまざまです。起こりがちなのは「従業員同士のコミュニケーショントラブル」、配慮やマニュアルがうまく機能しないことで起こるトラブルです。
この場合は、まず当事者の声を丁寧にヒアリングすることが重要です。その上で、ジョブコーチや産業医をまじえて解決の道を検討していきます。